五十鈴サッカー少年少女団 コーチの雑感

小学生年代に必要なものを身につけよう‼

サッカー文化を育てる!

 現Jリーグ常勤理事で、スペインのビジャレアルをはじめとする複数のチームでコーチや育成に携わってきた佐伯夕利子さんの著書 “教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術” を熟読させてもらっています。サッカーの技術指導的な書籍は数あれど、子供達の自分で考える力を育むには、指導者がどうすべきかの方向性を具体的に指し示す特別な本は、なかなかありません。

 本の序章にマンチェスターシティFCアカデミーに所属していたジェレミーウェスティン君の事が紹介されていました。クラブから契約を切られた17才の彼は自死という道を選んでしまったと言う衝撃的なニュースです。マンチェスターシティと言うビッグクラブに所属しているサッカーエリートの子でも、過酷なサバイバルに身を晒されて、勝ち残っていくことがどれだけ大変なのか思い知らされ、心が痛みます。

 イングランドの5年前のデータでは、イングランドの150万人のフットボーラーのうちプレミアリーグでプレーしたのは180人、その確率はたったの0.012%だそうです。

 また、スペインでも2020年現在でプロになれるのは、2600人に1人で、その確率は0.038%だそうです。いかにプロになるのが厳しい数字かが具体的によくわかります。

 では日本の場合は?

2019年度の第4種(小学生年代)の登録者数は約26万9千人、2019年に新にプロ契約を結んだ選手が約205人、Jリーガー(J1.J2.J3)になれる確率は、ざっくりな計算で、約1320人に1人、J1の選手になる確率は、3900人中1人だそうです。

 この本を読み終えて、サッカーの指導者、コーチとしての本来の目的から逸脱して、僕たち少年団のコーチや子供の親として、サッカーを上手くさせるために、サッカー選手にさせるためにを名目にして、子供達に強制的なサッカー、無理強いのサッカーをさせているのではないかと思うのです。

小学生年代の子供達の夢はプロサッカー選手になりたいが多く聞かれます。

しかし、上のカテゴリーに上がるにつれて、周りの子との比較でサッカー選手になる夢を語る子は減っていき、親の熱量もドンドン下がっていくのが現実ですかね!

小学生の頃からサッカーばかりに打ち込んで、多感ないろんな事を吸収出来るこの時期に、目先のたかが小学生の試合に勝利を至上命題とされ、大人に操られて、最後には何も残らない!では寂しく、大きくなったその後にどう取り返して行けるのか?

 大人達が熱すぎるほどにチームの勝利に飢え、"子供達を勝たせてあげる""子供達に勝利を味あわせてあげる"を名目に自分のプライドを満たそうとする現状が見受けられるのは残念でなりません。

 小学生や中学生はまだまだ育成年代です。ミスをするのは当たり前、なのに大人のサッカーを教え込まれて、大人が自分の思い描くプレーを強要されて、失敗出来ない雰囲気やチャレンジ出来ない雰囲気がチームに蔓延する。そんな環境が少しずつ無くなって、チームに所属する子供達が平等に試合に出て、サッカー楽しいと思えるチームが沢山増えてくれたら、ずっとずっとサッカー大好きっ子が中学、高校、成人しても世代を越えてサッカーにかかわってくれる。それは、大成功と言えるのではないか!

 子供達のする事に安易な勝ち方を教えず、近道を教えず、先回りした失敗しないやり方を教えず、失敗という名のたくさんの経験をしてもらえるように、ゆったりまったり遠回りのサッカーをしていきませんか?

 サッカー大好きな子供達がたくさん増えて、学校の休み時間に男の子も女の子も、低学年も高学年も、サッカー習ってようがなかろうが、みんなでサッカー楽しくやっている風景が沢山あって、身近にサッカーを感じられる子供達が増えたら、子供達のサッカー平均値が上がって、その中から大人の固まった発想を蹴散らしてくれるような化け物な子が出現してくるんだと思う。